小中和哉監督が1986年に発表した長編映画を35年ぶりにセルフリメイクした映画『星空のむこうの国』(絶賛公開中)の公開記念舞台挨拶イベントが7月17日(土)に都内で行われ、主演の鈴鹿央士、共演の秋田汐梨、佐藤友祐(lol-エルオーエル-)、有森也実、そして小中和哉監督が出席登壇した。
35年ぶりのセルフリメイク作が公開となった小中監督は「当時自分が22歳で撮った映画のリメイクを、同じくらい若い年代の方に観て頂けて嬉しい反面、どういう感想を持たれるか気になりますね。キャストもみなさんも現場では「違和感があれば言ってねと」お願いをし、それぞれの思いが反映された役に仕上がっていると思います。」と感慨深い気持ちを語った。
上映後の舞台挨拶ということもあり、撮影中の印象的なエピソードについて主演の鈴鹿はクライマックスでの堤防のシーンを挙げた「数日間に渡った撮影だったので、前日の気持ちを思い出しつつ演技するのが難しくもあり楽しかった」と語り、秋田も同じく堤防のシーンが印象深かったようで「私の演じた理沙の体調が悪くなるシーンだったので、意識を失いかけたり目覚めたりを繰り返すシーンが日をまたぐので、繋がっているか考えて演じるのが難しかった」と役柄独特の苦労があった様子。撮影自体は「前作と同じスタッフさんも集結していることもあって、とても一体感のある現場だったと思います。有森さんも本当のお母さんみたいに話しかけてくれました」と思い出深いエピソードも漏れなく披露。それに対して有森は「秋田さんは芯が強くて頼もしいのが魅力だと思っています。今回の理沙は前作とほぼ同じセリフで、今度は母親役として秋田さんの言葉で聞いたので、とても不思議な気持ちでしたが、なんだか本当の母になったような気持ちがしました」とかみしめるように伝えた。尾崎を演じた佐藤の撮影中の印象的なシーンは、モノレールのシーンとのこと「自転車に乗りながら長台詞を言い、さらにそれをモノレールが通過するタイミングに合わせなければいけなかったので、プレッシャーがすごかったです!結果的に一回NGだしてしまいましたけど」と会場の笑いを誘った。
鈴鹿、佐藤、秋田の3人の若いキャスト同士のエピソードとしては佐藤から「央士くんがかわいくて“ぼく仲良くなった人にはすぐ抱き着いちゃうんですよ”って言われたんですけど、まだ抱き着かれてないんですよね……」と打ち明け、すかさず鈴鹿が「ほんとはやりたかったけど、コロナだったからね!」とフォローし、会場にはまた大きな笑いが。
本作には「時空を超える」というSF要素もあることにちなみ、もし自分が違う世界に行けるとしたら、という問いに小中監督は「今回35年の時を超えて『星空のむこうの国』をリメイクできたので、他にも僕が昔作った映画を第二稿という形でリメイクできたら良いかな」と映画監督らしい夢を語った。鈴鹿は「バブルの時のように、みんなが前を向いてモチベーションが高く、楽しそうなキラキラした世界がいいですね」と昨今の状況を鑑みた世界を発表。秋田は「寝るのが好きなので夜が長い世界に行きたい。できれば12時間寝たいです」佐藤は「世界中の言葉が共通の世界で、隔たりの無い世の中を見てみたいです」有森は「動物や他人と体を交換できる世界がいいなと思います、猫になってみたり汐梨ちゃんになってみたり」と各々の思う世界を挙げました。
続いて、35年前と今で、映画作りに対して変わった点、変わってない点に関して問われた小中監督は「当時はほとんど自主制作に近いやり方をしていたので責任を一人で背負い込むプレッシャーがありましたが、今は素晴らしいスタッフ、キャストに囲まれてチームプレイでつくることができたので、安心できたことが大きな違いですかね」と語り、セルフリメイクならではの胸中を語った。前作でヒロイン理沙役を演じた有森は、35年の女優人生で変わった点を問われると、「昔は自分じゃないキャラクターを演じるのが女優の仕事だと思っていたけど、今は自分の中にあるものが宝だとも思うので、経験の積み重ねが演技の支えになると思えるようになった」と気持ちの変化を挙げ女優生活を振り返った。
35年後の未来の姿について質問された鈴鹿は「35年後は今の父と同じ位の年齢になるので、僕も良い父親になっていたいと思います。後はもう少し大人っぽい顔になっていたらいいなと思います(笑)」続いて秋田は「私はできれば35年後も女優をして、今回の有森さんのように自分の演じた作品のリメイクに係らせていただくのも素敵ですね」と監督に3回目の本作のセルフリメイクをお願いしたが、監督は「35年後はちょっと難しいかな」と会場は和やかな笑いに包まれつつ、各々が未来の姿を想像した。
そして、本作には前作から映画に関わっているスタッフも多数いるが、実は前作で主人公昭雄の親友尾崎役を演じた関顕嗣(せきけんじ)がサプライズで登場し、今回尾崎役を演じた佐藤に「尾崎は切ない役だが、佐藤君がしっかり演じてくれてよかった。主題歌もやっていただけて、感無量です」と35年の時空を超えたメッセージを伝えた。同じく86年版でヒロイン理沙を演じた有森也実から、今回理沙を演じた秋田へも「理沙が私たちを繋いでくれましたね。秋田さんに理沙のバトンを繋げることが出来て幸せです」と手紙を読み上げた。有森は今作では理沙の母親役を演じ、秋田とは親子役として共演しているため、より絆が深まるエールとなった。最後に小中監督から鈴鹿へも「22歳の時に自分が撮った映画を、今21歳の鈴鹿君がみずみずしく演じてくれて、不思議な気持ちですが、とても嬉しかったです。これからも鈴鹿君の個性を活かして活躍してください」と手紙を読み上げ、鈴鹿は「幸せで胸がいっぱいです」と新キャストの面々に時空を超えたバトンを渡し、公開記念舞台挨拶は大盛り上がりのうちに終了しました。
『星空のむこうの国』はシネ・リーブル池袋他で、絶賛公開中。